2024年11月11日

巡査さんと村おこしの行方


巡査さんと村おこしの行方 (コージーブックス)

巡査さんと村おこしの行方 (コージーブックス)

  • 出版社/メーカー: 原書房
  • 発売日: 2019/03/07
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
エヴァンが巡査として働く村にほど近い山で、遺跡が発見された。アーサー王伝説を証明するものかもしれない、ウェールズで有名な聖人の墓かもしれない、これでやっと村の名前が地図に載るかもしれない! 遺跡を発見したのは、毎年夏の休暇を村で過ごす退役軍人の老人。村人たちからおおいに祝福されたがその翌日、橋の下で遺体となっていた。祝杯の飲みすぎによる事故かと思われたが、エヴァンの目には不自然に映る・・・・・。そんななか、20年ぶりに村に帰ってきた男が、廃坑を利用したテーマパークを作る計画を発表した。仕事が増えると歓迎する者、よそ者がやってくることを不安がる者、賛否両論入り乱れて大騒ぎに! エヴァンは村に平穏を取り戻せるのか!?


2024年10 月に読んだ7冊目の本です。
リース・ポウエンの「巡査さんと村おこしの行方」 (コージーブックス)
「巡査さん、事件ですよ」 (コージーブックス)(感想ページはこちら)に続く〈英国ひつじの村〉シリーズ第2弾。

夏を村ですごす退役軍人のアーバスノット大佐が、すわ、遺跡かと思われるものを見つけて、スランフェア村は大騒ぎ。
時を同じくして20年ぶりに村に帰ってきたテッド・モーガンが、廃坑を利用したテーマパークを作る計画を発表。これまた大騒ぎ。
殺されるのが、アーバスノット大佐とテッド・モーガンという、なんともタイムリーな(?) 被害者たち。

前作では主人公である巡査エヴァン・エヴァンズと対立するかのようなポジションだったワトキンス巡査部長が、ここでは上司ヒューズ警部補を共通敵(?) として、エヴァンサイドになっていてニヤリ。
「いっしょに来てもらわないと困るんだよ。わたしはウェールズ語があまりうまくないんでね。」(219ページ)とか言って、調べに同行させてくれたり、仲良くいっしょにロンドンまで捜査にでかけていったりしますよ。

村に、幼い子供をつれた美貌の女性アニーが越してきて、エヴァンと親密になりそうな気配で、ベッツィとブロンウェン・プライスのエヴァンを巡る恋の鞘当てに彩りを添えて(笑)、これまたニヤリ。249ページからのくだりとか、本当に面白かったですよ。
エヴァンは自覚しているのかしていないのか、気持ちはブロンウェンにしっかり傾いているんですけどね。

なかなか進まなかった捜査は、ラスト近くで急転直下の急展開。
割と早い段階で、読者の気を惹くように書かれていたエピソードがずっと忘れ去られたままだったのを、急に回収して解決に向かうので、この展開はどうなの、と思わないでもないですが、そこものんびり、おっとりしたスランフェア村のありようとマッチしているのかもしれませんし、合わせて、恋の鞘当ての方もそれなりの進展があったりして、楽しく読みました。

男性主人公、しかも警察官という、異色の主人公を据えたコージー・ミステリシリーズですが、とても居心地よく読めました。


<蛇足1>
「あの貸別荘にいるイギリス人が、ちゃんとしたイギリスのラム肉を置いているかとずうずうしくもおれに訊いてきたんだぞ! 外国のラム肉を売るくらいなら、店を閉めると言ってやったんだ」(25ページ)
すぐ怒る肉屋のエヴァンズのセリフです。
イギリスとなっている箇所、おそらく原文は England だと思われますが、ここは難しいですね。
イギリスは、正式名称が「グレートブリテン及び北部アイルランド連合王国」でグレートブリテンは、スコットランド、イングランド、ウェールズからなっています──たとえばラグビーやサッカーのワールドカップでは、それぞれが ”国” として別々にチームを送り込んだりしていますよね。
中心と考えられているイングランドではそうでもないですが、スコットランドやウェールズでは、それぞれが自分たちの国、という意識が強く、イギリス全体で一つの国ではあるのですが、それぞれの地域はそれぞれが国だという意識も残っています。ということを考えると、ここはイギリスではなく、イングランドと訳した方がよかったかもしれませんん。
強硬なウェールズ愛国者(とでも呼ぶのでしょうか?)からすると、イングランドは外国なんです!

<蛇足2>
「山の上は気持ちがよかった」アーバスノット大佐が言った、「海が見えるくらいに晴れ渡っていて、双眼鏡──上等のドイツ製だ。日本製のくずじゃないぞ──をのぞいたら・・・・・」(65ページ)
原書の刊行は1998年ですが、日本製が粗悪品扱いされている......
この頃にはすでに日本の電機メーカーや自動車メーカーの工場がウェールズではしっかり稼働していたはずですが......


原題:Evans Help Us
作者:Rhys Bowen
刊行:1998年
訳者:田辺千幸



posted by 31 at 19:00| Comment(0) | 海外の作家 は行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください