2024年11月12日
祭火小夜の後悔
<カバー裏あらすじ>
30歳過ぎのひきこもりの兄を抱える妹の苦悩の日常と、世界の命運を握る〈悪因〉を探索する特殊能力者たちの大闘争が見事に融合する、空前のスケールのスペクタクル・ホラー! 二階の自室にひきこもる兄に悩む朋子。その頃、元警察官と6人の男女たちは、変死した考古学者の予言を元に〈悪因研〉を作り調査を続けていた。ある日、メンバーの一人が急死して・・・・・。第22回日本ホラー小説大賞優秀賞受賞作。文庫書き下ろし「屋根裏」も併録。
2024年10月に読んだ7冊目の本です。
秋竹サラダ「祭火小夜の後悔」 (角川ホラー文庫)。
第25回日本ホラー小説大賞&読者賞受賞作。
先日感想を書いた名梁和泉「二階の王」 (角川ホラー文庫)(感想ページはこちら)同様、大量の積読となっている日本ホラー小説大賞関連のものを読み進めている一環。
目次を見ると
第一話 床下に潜む
第二話 にじり寄る
第三話 しげとら
第四話 祭りの夜に
となっていて、連作短編の形式になっています。
第一話は、ほぼ空き教室となっている旧校舎で、床下に潜んでいて床板をひっくり返す人間ではないものとでくわす教師坂口のお話。
第二話は、大きなムカデのようななりをしたものに憑かれている高校生浅井のお話。
第三話は、幼い頃に ”しげとら” という存在と取引してしまい、その十年後に身体を取られてしまうとおびえる女子高校生糸川葵のお話。
それぞれ、祭火小夜に関わり、教えてもらったおかげで、対処できた、という着地を見せます。
いずれも短いお話で、それほど怖いとは正直思いませんでしたが、しっかり怪異のイメージは伝わって来て、対処までスムーズに楽しめました。
そいて第四話。ここまでとは違い、中編から短めの長篇くらいの長さになっています。
いよいよ祭火小夜自身のお話となるわけですが、ここでオールキャスト勢ぞろい、これまでの話に出てきた、坂口、浅井、糸川も登場します。
彼らの住んでいる場所の隣町T町にいる大きなクマのような魔物に狙われている小夜の兄を救うため、祭りの日に、魔物を惹きつけると小夜の言う巾着袋を持ち囮となって日没から日の出まで、車で走って逃げる、というお話。
物語は坂口の視点で、三年半前に坂口と交際していた女性が、T町の老朽化した橋の崩落で命を落としていたという過去が語られます。
どうも小夜は隠しごとをしているらしい......なにしろ小夜の兄は(以下ネタばらしになるので自粛)。
この第四話もそれほど怖いとは思いませんでしたが、読者に伏せたままになっていることを起点に、するするとプロットが展開していくのがとてもいいな、と感じました。
特に巾着袋のエピソードにはいたく感心しました。なるほど、と。
軽いタッチの作品で、怪異を描いているもののホラーとしての怖さは薄いですが、楽しく読める作品だと思いました。
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