
チョコレートクリーム・パイが知っている (mirabooks)
- 出版社/メーカー: ハーパーコリンズ・ジャパン
- 発売日: 2022/01/14
- メディア: 文庫
<カバー裏紹介文>
ハンナは傷つき悲しみに暮れていた。愛するロスの裏切りが発覚したのだ。家族や友人たちに支えられながらなんとか立ち直ろうとしていたその矢先、行方不明だったロスが突然現れ、ハンナを愛している、もう一度やり直すために銀行に預けてあるお金を引き出してきてくれて告げる。彼の身勝手さに怒りを覚えるも、人が変わったようなようすにハンナは戸惑う。そんななか、信じられない事件が起きて・・・・・。
2024年11月に読んだ2冊目の本です。
ジョアン・フルークのお菓子探偵ハンナシリーズ第22弾。「チョコレートクリーム・パイが知っている」 (mirabooks)。
前作「ラズベリー・デニッシュはざわめく」 (mirabooks)(感想ページはこちら)。で明かされた、ロスについての衝撃の事実を受けてのお話です。
ハンナは日曜日の協会で、レイク・エデンのみんなにその事実を話します──なんと小さなコミュニティなのだろうと思いましたが、アメリカの田舎町はこんな感じなのかもしれませんね。
町のみんなはハンナの味方。
グランマ・ニュードースンが
「もしロスが戻ってきて死んだりしたら、町じゅう容疑者だらけということになるわ!」(20ページ)
と早々にいうのですが、果たしてどうなるでしょう?
はたしてロスがレイク・エデンに戻ってくるか、こないか、という話が続いて、なかなか事件は起きません。
ロスはハンナを電話で脅したりして、すっかり変わってしまったところをさらけ出してしまいます。
ハンナと周りの面々が厳戒態勢をとる中、日常が続いていく、という構図です。
事件が起こるのは320ページ。最終ページが410ページなので、終盤も終盤ですね。
殺されたのが誰だったかは、読んで確かめていただくことにしましょう(さて、グランマ・ニュードースンの予言?は当たっていたでしょうか)。
殺人発生が最終盤だったこともあり、慌ただしくエンディングへ向かいます。
ハンナが推理らしいことをしないのはいつものことですが、急転直下の解決には苦笑してしまいます。
注目は、久しぶりに(?)ちょっとひねった動機を提出していることでしょうか。
ただ、この動機については伏線がなく、また背景などもきちんと説明されていないので、読者が推理する余地などかけらもないことに加え、動機そのものについてもわかりにくくなっているのが難点。
ちょっと変わった動機だと思うので(根元はよくある動機なのですが、ひねった部分がわかりにくい)、ここは丁寧に扱ってほしかったです。
本書は、疑問を残したまま終わっているので(最後にハンナが疑問点をまとめて考えています)、次巻以降に展開されていくのだと思います。
<蛇足1>
「きみたちは友人同士だから、ハンナに金をわたせのはわかっていたと。」(300ページ)
誤植があるのは珍しいことではないのでさほど気にしないのですが、ここは正しい文章がなんなのか、ちょっと想像がつかないので困ってしまいました。
わたせる? わたせた? いずれにせよ日本語としても変だし、文脈からもあまりそぐわないような気がします。
本当になんだったのでしょうね?
<蛇足2>
「ハーブと何をして時間をつぶしたの?」
返事がなかったので、ハンナは振り向いてリサを見た。そして、彼女の顔が真っ赤になっているのに気づいた。「ごめん、大きなお世話だったわね」(109ページ)
雪に振り込められた時の話です。
こんな会話もするんですね(笑)
原題:Chocolate Cream Pie Murder
著者:Joanne Fluke
刊行:2019年
訳者:上條ひろみ